2011年10月22日土曜日

しょうねん#8。


朝の通勤ラッシュ、アルコール浸しの脳味噌を頭蓋骨で護り、ボテボテと歩く。
JRから地下鉄への連絡通路。酔い覚ましのドリンクをポケットに入れて、地下鉄に乗る前に飲むんだ。永遠の不良中年は大きな人の流れを横切る。

子供の悲鳴が聞こえる。男児。色のついた帽子をかぶった幼児が泣き叫ぶ。それを追い抜く。
前方を見ると同じ帽子の5、6人、多分集団登園ってやつだろうか。保母に手をつながれたような幼児達が後ろをみて立ち止まる。

僕のほんの少し後ろ手、その叫びの主は、40後半だろうか。仕立の良いスーツだ。知的で穏やかで、体型の崩れぬ所謂「よく出来た」男に手首を強く握られ、泣き叫んでいるのだ。

「パパが手を持って痛い。もう嫌だ」
幼児が泣き叫ぶ。父親は

「だって走ったら迷っちゃうだろう。パパが持って無いとどっかいっちゃうだろう?」

「もうパパとは絶対いきたく無い」

困惑した父親が、困った顔で幼児をなだめる。多くを手に入れた、人生後半の男が、己の子供の手綱も取れずいるのだな。
パパとは絶対いきたく無い、のか。

じゃあいかなきゃいいんだ。今日のこの言葉を一生忘れないでおくがいい。



夕方、小学生がバス停に。塾帰りだろうか。
少年同士の会話。

「そんなに何度もいったら、疲れちゃうよ。」

若いくせに、そんなことだけは知ってるんだな。
 

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