2010年12月15日水曜日

映画版。

朝から映画「ノルウェイの森」を観て帰宅。
結局、この手のは「文字」をどういう方法で「映像化」するか、という部分の好き嫌いでしかないのだろうな。そこで賛否が分かれるかも知れないが、僕は満足でした。

原作を、あえて読み返さないで観たのですがそれは正解かな。「原作をそのまま映像化」したものを望むといくらでも不満は出流でしょう。
「ヴィヨンの妻」が原作の短編小説を忠実になぞって映像化していたのとは違う。

元々「雨の中の庭」というタイトルになる予定だった小説に「ノルウェイの森」という曲(実際は不倫ソングなのだが)のタイトルを被せた時、その曲の空気感と小説の空気感が一致した時点で原作は成功だったのだろうな。
そういう意味では、小説の持っていた空気感を映像に移植出来た時点で映画は成功だったと思う。

長編小説の文字を95%くらいカットして残り5%を朗読し、その隙間を美しい映像で埋めるような作り、この監督の手腕は素晴らしい。
「小説言葉」を村上春樹が「話し言葉に変えてはどうか」とアドバイスしたのに対し、現場で「小説言葉」のままでやろうとの判断があったらしい。松山ケンイチの朴訥とした語りは主人公の感じている違和感を具現化しているようにも思える。

結局、長編小説を2時間の映像にするのであれば、原作の持っている要素を相当省かねばならないと思うのだが、この「引き算」の表現が大人でいいです。
人は何かをしようとすると、兎角自信が無くて「足し算」ばかりしてしまうものですが、そこを「引き算」の美で見せるところがいいですね。
本筋と関係無い印象的な挿入エピソードがさらっと流されていたり、登場人物のキャラクター差で幅を持っていた世界をギュッと凝縮して、世界観を単調にしたのがとっ散らかりを防いだように思えます。

好き嫌いは別として、菊池凛子って人は「巧い」人だな、と思いました。初めてみたんですが。台詞の少ない映画を、表情だけで語る演技は流石世界的な女優だな、と思ったもんです。

賛否が分かれるのは承知で、僕はとても好きですね。

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