2010年12月2日木曜日

板の上の愛ちん。

飯島愛が好きだったな。

飯島愛。90年代初期にアダルトビデオ女優でデビューして、すぐに人気者になったようだ。そのまま深夜のエロ番組に抜擢され、いつの間にか 〔AV女優→テレビタレント〕 にシフトした初期の成功例だね。及川奈央 とか 蒼井そら なんかがその路線の後継かね。
アダルトビデオ女優としては、ボクはなんにも興味が無かった。ボクはこの手のやつは「顔」と「スタイル」を重視するのだけれど、どうにも彼女の「垢抜けない」顔が好きになれなかったんだよな。胸は如何にも「整形です」って感じだしさ。
ヤンキー臭い雰囲気も苦手で、つまりは「どっちかと言えば嫌い」な存在だった。


ボクの家には90年代前半の5年間はテレビは無かったし(つまりビデオも)、仕事始めてからはゴールデン・タイムのテレビ番組なんて見る機会が無かったので飯島愛をいつから好きになったのか、明確な記憶が無い。

彼女はあまり知識が少ないようで、どんな権威のある人やモノに対しても同じ水準で接することができるのが強みだよな。そして非常に的を射た「疑問」を持って、堂々と本人に聞けたりしてさ。

オトナがなれない「王様は裸、と叫ぶ少年」の役回りを天然で出来たんだよ。

ミスター・タイガース掛布雅之とテレビに出て、掛布の昔の映像をみて
「掛布ちゃんって、すごい人なんだねー」
と吃驚していたのが印象に残っている。

もちろん直接は知らないので伝聞でしかないのだけれど、そういった表の顔とは別に裏では非常に人情深く、そして孤独だったようだね。うん、孤独の匂いがプンプン漂っているような人だった。


2007年3月に突然芸能界を引退する。
「テレビに出ているような人はみんな『板の上』で勝負できる。あたしにはそんなものが一切無い。勝負出来ない。」

引退してもブログはたまに更新されていたからな。みてたんだ。2008年の12月には、エイズ関連のキャンペーンに出席して、街中でコンドームを配っている映像が流れたりして。昔ながらの軽妙なしゃべりで街の人に接していて、凄く安心したものだった。
「ほら、かあちゃん、これ。あ、もう要らないか?」

そのほんの数週間後、クリスマス・イヴの日に彼女の死亡速報が流れる。
自宅マンションで死後一週間程度で発見。孤独な人は孤独に死ぬのかね。


今、彼女を思い出そうとしても、なにも浮かばないんだよな。
所謂芸能関係者って、音楽とか映画とか、ドラマのアーカイヴとか何かしらその人を回顧することが出来ると思うのだが。彼女、(AV以外では)何も残っていないよな。ゴースト・ライターが書いたベスト・セラー本があったか。読んでないけれど。

確かに「板の上」で勝負しないと、なにも残るものって無いんだな。彼女の言った意味がなんとなく分かって来た気がするよ。

そういう意味では、もの凄く「刹那的な」人なんだろうな。一瞬一瞬で放つ言葉が素敵だった。それだけの人。とても好きでした。多くの人に愛されても孤独なんてそれは不思議。
 

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