2010年12月27日月曜日

雪について。

雪の降らない国で育った。国。
「キミのお国はどちらなの?」
と聞くと、吃驚されることがある。故郷の土地のことを、「国」と呼ぶのは一般的では無いのかね?

まぁいい。僕の田舎は、雪が降らない。列島の中央を走る山脈に妨げられ、雪雲が僕の育った街には届かないようなのだ。
十数年に一度くらい、3cmも雪が積もると子供達は歓喜した。風花でも飛べば、「雪だよ。」と言って興奮したものだ。つまり、それくらい雪とは無縁であるということ。

今、どうやら寒波が日本列島を覆っているようで、ニュースでは雪で乱れる交通機関の映像を流している。
妹が近畿地方の山奥に住んでいるのだが、産後の妹の手伝いで母が冬のかの地に赴いた時、その色彩の乏しい静かな土地に、何か落ちていくような気分を味わったそうだ。

ニュースの映像の中で、くすんだ白い空と、汚れた白い大地の風景が流れる。モノクロームの世界に、人造物のみが色彩を放つ。とは言え、その色彩は世界の支配を逆転する程の力は持たない。色の力が無力だ。

白い風景に飲み込まれる。別にそれは暴力的ではない。静かで、冷たく白いだけだ。
音と色の無い世界の底辺で、沈黙を守っている新しい生命は、春の訪れをただ只管に待つのだろうね。そして雪が溶ければ、彼等の色彩を伴う反逆が始まるのだ。

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